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永遠平和について

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昨今、世界の色々な地域で紛争やテロなどについて報道されています。
世界の平和はいつやってくるのか、現代多くの人が考えていることかと思われますが、カントという18世紀の哲学者も「永遠平和」について考えていました。

それが今回紹介する本、『永遠平和のために (岩波文庫)』です。 

永遠平和のための予備条項

カントは永遠平和のためには、6つの予備条項と3つの確定条項が達成されなければならないとしています。
まずは【予備条項】から説明したいのですが、これは畢竟人類が殲滅戦に突入し、滅亡してしまうことを防ぐための6つの条件です。


 

第一予備条項
将来の戦争の種をひそかに保留して締結された平和条約は、決して平和条約とはみなされてはならない。

第二予備条項
独立しているいかなる国家(小国であろうと大国であろうとこの場合問題ではない)も継承、交換、買収、または贈与によって他の国家がこれを取得できるということがあってはならない。

第三予備条項
常備軍は時とともに全廃されなければならない

第四予備条項
国家の対外紛争に関しては、いかなる国債も発行されてはならない

第五予備条項
いかなる国家も、他の国の体制や統治に暴力をもって干渉してはならない

第六予備条項
いかなる国家も、他国との戦争において将来の平和時における、相互間の信頼を不可能にしてしまうような行為をしてはならない。例えば暗殺者や毒殺者をやとったり、降伏を破ったり、敵国内での裏切りをそそのかしたりすることが、これに当たる。


 

それぞれの条項の文章を読めば、おおよその意味は分かるかと思います。
ただ、1つだけ。常備軍について書かれた第三条項においてカントは面白いことを言っています。

常備軍というのは現在ほとんどの国家が持っているものですが、カントはこれこそが先制攻撃の原因になると言っています。
つまり、常備軍があることによって、国家は互いに無際限な軍備の拡大を競うようになり、それに伴って軍事費が拡大する。そしてやがては軍事費の増大から平和の方が短期の戦争よりもいっそう重荷となり、この重荷からを逃れるために常備軍そのものが専制攻撃の原因となってしまうのです。

軍事費の増大によって平和状態が重荷になる、ということは私自身そこら辺の予算について詳しくないので、現代においても適用できると断言はできません。しかし、常備軍が存在し軍事力拡大が競い合っていくことによって緊張が高まるというのは、米ソ冷戦や、現在の中国とアメリカの状況などがその具体例であるように思えます。

永遠平和のための確定条項

予備条項によって人類の存続が確保された上で、永遠平和が具体的に実現されるための条件として3つの【確定条項】が挙げられます。


第一確定条項
各国家における市民的体制は、共和的でなければならない

第二確定条項
国際法は、自由な諸国家の連合制度に基礎を置くべきである

第三確定条項
世界市民法は、普遍的な友好をもたらす諸条件に制限されなければならない


 

それぞれの国家は共和制を採用し、国際舞台においては国際連合などの組織が制度を課し、世界の全ての人々はどの国に行っても迫害を受けず、友好的に扱われる。カントが構想した永遠平和とはこのようなものでした。

ちょっとした考察

以上のように、カントはただ9つの条項を達成すれば永遠平和が訪れるとしました。(これらの説を補足するものとして第一補説と第二補説が続くのですが、ここでは割愛します)。「9つだけしかない」と考えると非常に簡単に思えますが、やはりこれが中々難しいです。常備軍を廃止することも、国家が一斉に廃止できれば簡単なのですが現状では不可能に近いです。また第五予備条項に見られるように、暴力であるかどうかは置いておいて、他国の体制に干渉できなければ世界の独裁国家を容認することになってしまいます。確かにこの本が提言することを忠実に再現すれば永遠平和は達成可能ですが、あまりにも理想的であると言えます。

しかし、これを空理空論として無視することもまた馬鹿げているように思えます。完全な組織とは言えませんが、国際連合という現存の組織もカントの提言から出発したともいえます。また先進国が中心にはなりますが、パスポートを持っていれば入国を拒否されたり、入国したことで明らかにひどい扱いを受けることもありません。

国際的な取り決めがなく自由に他国を侵略できたり、他国に行くのに密入国しなければならなかった時代から見れば、現代ははるかに進歩しています。それは戦争はおきながらも、着実に平和について考えてきた結果であるといえます。それ故に現代の私たちも平和について考えを放棄せず、理想を持ち続けることがとても重要なことなのではないでしょうか?

 

以上、いつもよりまじめなことを書いてしまいましたが、こういったことを考えるキッカケとしてもこの本はお勧めです。
カントの文章の割りに結構分かりやすい本なので、ぜひ皆さんも読んでみてください!

 

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